昔書いていた某作品の二次創作
色気全く無いBL。メリバ…でもないな。
『はざま』と呼ばれる場所がある。
生の世界では天国とも地獄とも言われる場所、生の世界を終えて次の生に備えるための準備をする場所、といえばいいのだろうか。その場所にいる者たちは次の生の為に、過去の汚れを浄化して無垢な存在としてまた地に還る。つまりここに到着したばかりの者ほど過去の世に捕らわれ、新たな世の準備ができた者ほど過去の記憶が失われている。そんな場所だ。
俺はその魂達を管理する監督者である。どのぐらいこの仕事をしているかは忘れた。時間なんて気にしてられる程、短い期間じゃねえのは確かだ。
そして今、新しい魂の担当を言い渡された。
やってきた魂は享年15歳、名を✕✕✕と伝えられる。まだ若々しいエネルギーに溢れた魂だった。それ以外の情報は特に伝えられない…情報は必要ねえからだ。情報は魂に語らせればいい。語るという行為が、記憶の消去に繋がる。つまりはおしゃべりな奴ほど輪廻までのスパンが短いって事だ。
ただしどういう法則かわからねえが、名前を忘れるのは一番最後と決まっている。名前を忘れた時がその時だと、仕事面で言えば楽っちゃ楽なんだが。名前というのは、生の世界に縛りやすいものなんだと誰かが言っていた気がする。
ともかくこれから✕✕✕が、己の名前を忘れるまでの間、俺はこいつと共に生活をすることになる。多くの記憶を語らせ捨て去る為に。
「お前はどうして死んだんだ」
仕事の第一声はたいがいこれから始まる。人にとって一番忘れたいのは死に際の様が多いからだ。✕✕✕は小さく唸った後、ただ薄く笑みを浮かべるだけで答えない。
「なんだ、覚えてないのか?」
「……」
基本、魂というのは自己主張が激しい。だがこいつは違うようだ。ただ笑い、首を傾げ、喋る事を拒否しているように見えた。つかみどころが無いし会話を引き出せないので、こいつは骨が折れそうな案件だと思った。
「てめえは何故語らない」
記憶に関わらない質問を投げてみることにした。
「喋ると忘れると聞いて」
輪廻転生のシステムは、俺の様な監督者にわたる前に必ず一通りの説明をうける。説明内容は多岐にわたるが、簡単にいっちまえば『転生すれば次の幸せがまってるよ★』的な洗脳を受ける。『幸せ』という、物差しで測れん幻想に縋らせ記憶を奪う。魂は本能的に『幸せ』を求めてしまうものだから。
「忘れたくねえ事があるのか」
「ええ」
即答される。声、という概念は無いが、魂の力強い意志が感じられる。こいつは手なずけるのはやはり難しそうだ。と、思った矢先だった。
「貴方は俺が転生したほうがいいと思いますか?」
逆に質問をされる。
「そりゃ、ここに止まってたとしていいことは無いだろ」
「どうしてです?」
「15歳で若死にしてる魂が幸せだったとは思えねえ。なら次の生で今世の分も幸せになればいい」
俺の言葉には同意を示せないのか首を横に振る。
大事な記憶に抵触しないように、言葉を選んでるように、魂が迷ってるように見えた。
「貴方は俺の事を覚えてないですか?」
「…?」
「監督者は、世に未練がありすぎる者がなる…と。別の魂の汚れを御祓、その長い過程で俺達同様転生するんだと聞きました」
「それは誰から聞いた」
「前の担当者からです。俺、他の人には喋らないと、貴方を指名して担当替えしてもらったんですよ」
「…」
つまりは、こいつは生きていた時の俺を知っていると言いたいのだろう。
「……やっぱり覚えてないんですね」
魂は残念そうに蒼白い光を放つ。
「俺を知っているのか」
「…ええ。だから俺今幸せなんです。貴方に会えたから。ああ、でもこれ言っちゃうとこの幸せも忘れちゃうのかな」
魂が蒼白く色を発する。これは浄化という名の忘却の合図。
「これから俺の事を話します。…そして先に待ってます。貴方がここから開放されるのを」
魂は語り始める。壁の中の世界で味わった苦悩の日々を。それは15歳という人生にしては長く重い物語だった。あちらの世界の何日間だろう、数日間という期間話につきあった。話す度に徐々に消えていく記憶に戸惑いながらも、こいつは話す手順を組み立てていた。
「ああ、もう残ってない。たった2つ以外」
「なんだ」
これが最後ですね、と✕✕✕は告げる。
「俺の名前と、俺が愛した人の名前」
「15で愛を語るか」
「年齢なんて関係ないです。生きていた時に伝えられなかったから、代わりに聞いていただけますか?」
「ああ」
「■■■■さん、俺、貴方の翼になりたかった。今飛べない貴方の代わりに、俺が羽になりますね」
そういうと、魂は金色に輝く。浄化が終了し最後の名前の忘却が完了した証拠だ。
その魂は直ぐさま次の転生準備にはいる――つまり、俺の手元から離れる。
俺の元から消えた魂の残り光を見つめながら、俺自身の何かが震えるのを感じた。
「言うのが遅えよ」
監督者。それは思い残しが強すぎて転生できない魂の慣れはて。はざまの世界で黒い鎖に捕らわれた人に戻れねえ魂の事をいう。
✕✕✕が消えたその時、俺に絡まっていた鎖が解けた。一気に流れ来る後悔に満ちた記憶。そして忘れたくなかった感情を取り戻して目頭が熱くなる。
「次は俺から言わせろ、くそガキが」:畳む
#SS 2,112文字
色気全く無いBL。メリバ…でもないな。
『はざま』と呼ばれる場所がある。
生の世界では天国とも地獄とも言われる場所、生の世界を終えて次の生に備えるための準備をする場所、といえばいいのだろうか。その場所にいる者たちは次の生の為に、過去の汚れを浄化して無垢な存在としてまた地に還る。つまりここに到着したばかりの者ほど過去の世に捕らわれ、新たな世の準備ができた者ほど過去の記憶が失われている。そんな場所だ。
俺はその魂達を管理する監督者である。どのぐらいこの仕事をしているかは忘れた。時間なんて気にしてられる程、短い期間じゃねえのは確かだ。
そして今、新しい魂の担当を言い渡された。
やってきた魂は享年15歳、名を✕✕✕と伝えられる。まだ若々しいエネルギーに溢れた魂だった。それ以外の情報は特に伝えられない…情報は必要ねえからだ。情報は魂に語らせればいい。語るという行為が、記憶の消去に繋がる。つまりはおしゃべりな奴ほど輪廻までのスパンが短いって事だ。
ただしどういう法則かわからねえが、名前を忘れるのは一番最後と決まっている。名前を忘れた時がその時だと、仕事面で言えば楽っちゃ楽なんだが。名前というのは、生の世界に縛りやすいものなんだと誰かが言っていた気がする。
ともかくこれから✕✕✕が、己の名前を忘れるまでの間、俺はこいつと共に生活をすることになる。多くの記憶を語らせ捨て去る為に。
「お前はどうして死んだんだ」
仕事の第一声はたいがいこれから始まる。人にとって一番忘れたいのは死に際の様が多いからだ。✕✕✕は小さく唸った後、ただ薄く笑みを浮かべるだけで答えない。
「なんだ、覚えてないのか?」
「……」
基本、魂というのは自己主張が激しい。だがこいつは違うようだ。ただ笑い、首を傾げ、喋る事を拒否しているように見えた。つかみどころが無いし会話を引き出せないので、こいつは骨が折れそうな案件だと思った。
「てめえは何故語らない」
記憶に関わらない質問を投げてみることにした。
「喋ると忘れると聞いて」
輪廻転生のシステムは、俺の様な監督者にわたる前に必ず一通りの説明をうける。説明内容は多岐にわたるが、簡単にいっちまえば『転生すれば次の幸せがまってるよ★』的な洗脳を受ける。『幸せ』という、物差しで測れん幻想に縋らせ記憶を奪う。魂は本能的に『幸せ』を求めてしまうものだから。
「忘れたくねえ事があるのか」
「ええ」
即答される。声、という概念は無いが、魂の力強い意志が感じられる。こいつは手なずけるのはやはり難しそうだ。と、思った矢先だった。
「貴方は俺が転生したほうがいいと思いますか?」
逆に質問をされる。
「そりゃ、ここに止まってたとしていいことは無いだろ」
「どうしてです?」
「15歳で若死にしてる魂が幸せだったとは思えねえ。なら次の生で今世の分も幸せになればいい」
俺の言葉には同意を示せないのか首を横に振る。
大事な記憶に抵触しないように、言葉を選んでるように、魂が迷ってるように見えた。
「貴方は俺の事を覚えてないですか?」
「…?」
「監督者は、世に未練がありすぎる者がなる…と。別の魂の汚れを御祓、その長い過程で俺達同様転生するんだと聞きました」
「それは誰から聞いた」
「前の担当者からです。俺、他の人には喋らないと、貴方を指名して担当替えしてもらったんですよ」
「…」
つまりは、こいつは生きていた時の俺を知っていると言いたいのだろう。
「……やっぱり覚えてないんですね」
魂は残念そうに蒼白い光を放つ。
「俺を知っているのか」
「…ええ。だから俺今幸せなんです。貴方に会えたから。ああ、でもこれ言っちゃうとこの幸せも忘れちゃうのかな」
魂が蒼白く色を発する。これは浄化という名の忘却の合図。
「これから俺の事を話します。…そして先に待ってます。貴方がここから開放されるのを」
魂は語り始める。壁の中の世界で味わった苦悩の日々を。それは15歳という人生にしては長く重い物語だった。あちらの世界の何日間だろう、数日間という期間話につきあった。話す度に徐々に消えていく記憶に戸惑いながらも、こいつは話す手順を組み立てていた。
「ああ、もう残ってない。たった2つ以外」
「なんだ」
これが最後ですね、と✕✕✕は告げる。
「俺の名前と、俺が愛した人の名前」
「15で愛を語るか」
「年齢なんて関係ないです。生きていた時に伝えられなかったから、代わりに聞いていただけますか?」
「ああ」
「■■■■さん、俺、貴方の翼になりたかった。今飛べない貴方の代わりに、俺が羽になりますね」
そういうと、魂は金色に輝く。浄化が終了し最後の名前の忘却が完了した証拠だ。
その魂は直ぐさま次の転生準備にはいる――つまり、俺の手元から離れる。
俺の元から消えた魂の残り光を見つめながら、俺自身の何かが震えるのを感じた。
「言うのが遅えよ」
監督者。それは思い残しが強すぎて転生できない魂の慣れはて。はざまの世界で黒い鎖に捕らわれた人に戻れねえ魂の事をいう。
✕✕✕が消えたその時、俺に絡まっていた鎖が解けた。一気に流れ来る後悔に満ちた記憶。そして忘れたくなかった感情を取り戻して目頭が熱くなる。
「次は俺から言わせろ、くそガキが」:畳む
#SS 2,112文字
最初のシナリオ、考え中。
とある地域に浪漫感じてる。
とある地域に浪漫感じてる。
部屋模様を変えたくなる
最低限のことは確認できたかな…と思うので
私はこれからGWセールで安くなったswitchのゲーム遊ぶのです。
私はこれからGWセールで安くなったswitchのゲーム遊ぶのです。
4月にクリエイタールームできるのかな。
楽しみですね!
楽しみですね!
PBWクリエイター・トライアルワーク
プロジェクトナニカ様のクリエイター募集にて送付させていただいた内容を、置いていたら恥ずかしくなったところを修正したものになります。つまり、提出したのはこれよりも…。
●3人の囚人
荒野に相応しく乾いた空気に、『軋り狼』の咆哮はよく乗った。囚人達の前に堂々と降臨し、その姿、その大きさ、それだけでも戦意を削ぐには十分で。むき出された牙と鋭い爪は、闇雲に向かったとて勝機は見いだせない…と、それこそここが終の場所なのだと祈りに逃げる者も現れる。
「ふん。こんな獣など、僕ひとりでも十分だ」
そんな彼らの姿を横目に大きな蝙蝠型の翼を広げながらアンリが独りごちる。既に戦意喪失した彼らをただ犠牲にする必要もなし。口は悪いが彼なりの思いやりなのかもしれない。
(まずは僕の力がどの程度奴に通じるか…。弱点はあの背中の結晶、さてどうする…?)
ふむりと息を吐き、その呪いで得た翼を広げれば、目の前の巨体との距離を測りながらその手に深紅の炎を纏わせた。
(ヤバイ、ヤバイ…! こんなにデカいの!?)
アンリよりさらに後方、岩山で丁度陰になる位置から戦況を見る獣人マガリであるVDの姿がある。看守と衝突の絶えない彼女は、敵を其の目で認識するまで、もしかすれば少し楽観していたのかもしれない。しかし、それはあまりに巨体で、動くたびに打ち合い奏でる結晶の不協和音が耳障りである。
目の前で一人巨体に立ち向かう青年の姿を瞳におさめながら、「サイアク…」「やってらんない…」と本音という愚痴を零しながら、そこにいるだけで感じる強者の気配に、恐怖か緊張か、その陰から飛び出る足が出ずにいた。
そんな光景をまた別の岩場の陰から狼狩のハーベイは静かに見守る。元々人狼狩りを生業としている彼にとって、種は違えどなじみのある敵なのかもしれない。彼は戦いの開始前に煙草をひと吸いするのがお決まりとなっているが、今はそんな余裕もない…と出しかけたそれを懐に戻す。
(まあ、ちょっと違うようだが…)
右腕の義手を摩る。それは静かに展開をはじめ、獣をとらえるためのライフルへと形を変えた。
「さあて……楽しい楽しいお仕事の始まりだ」
巨体が故の面倒くささは感じるが、自分が狙うべきあの輝く結晶の位置は分かりやすい。それはハーベイにとっては幸運なことであっただろう。ただ問題は動けそうな囚人たちがどのようにアレと立ち向かうのか…それが掴みきれずにいた。
●対峙
アンリから放たれた炎は軋り狼の前足に直撃する。大きなダメージはないものの、足を止める程度には効果があるらしい。しかしそれは、軋り狼のターゲットが彼にロックされてしまうほかならなかった。火炎が飛んできたその方向を軋り狼はゆっくり見上げる。
―― あれか
視線が一瞬重なったその瞬間、アンリはそんな声が聞こえた気がする。と同時に、ぞくりと背筋が凍るような殺意。次の瞬間その巨体からは想像もできない機敏さでアンリ目掛けて跳ね上がり、彼がそうしたのと同様に機動力を奪うべくその翼目掛け、鋭い爪が狙い定めた。幾度の攻撃を避けたものの気づけば背に岩壁が迫る。
「…しまっ!!」
迫る危険に成す術を考える余裕はない。無意識に腕でガードするが…。
ざしゅ…
空を切り裂く衝撃波がアンリと軋り狼の間に走る。
「や、やった」
VDが間に飛び込み放った蒼爪斬が軋り狼の体に直撃し、ほんの僅かであるが仰け反らせることに成功する。だが無理矢理間に入ったがために、VDの右腕にもまた狼の爪の先がほんの僅かあたる。
「あたしだって、やれるんだ……!」
深手ではないものの腕に滴る血を抑えつつ、彼女の少なからず自信として芽生えたのかもしれない。…が。
「貴様、何をやっている!」
危機を脱出したアンリから投げかけらる怒声。
「あんたがどう思うかわからないけど、あたしはここで他の囚人がやられちゃったら…そうなったらあたし、きっと自分を許せないよ。それに大丈夫、掠っただけだし」
そんな彼にVDは腕を軽く回して見せ、そのまま再び軋り狼に蒼の衝撃波を打ち込んでいく。しかし一撃一撃は確かに敵を捕らえてはいるが、その巨体故か決定的なダメージを与えている手ごたえは感じられない。
二人の中に焦りが宿る。
ばりん
長く感じたその一瞬を切り裂きそれは起きた――と同時に軋り狼から苦痛を示す雄叫びがあがる。見れば背の結晶が一本崩れ落ちていく。
「結晶の破壊は任してもらえないかい?」
左手を振り居場所をアピールしながら、アンリとVD呼びかけるハーベイ。先立っての二人の行動を見て、今回動けそうな囚人を見定め、そうを伝える。それは単独行動を得意とするアンリにとっては不本意なものであっただろう。
だが。
「わかった。足止めは此方に任せろ。彼女の能力と合わせれば、十分可能なはずだ」
彼は、先程のVDの言葉に何かしらの気持ちが動いたのかもしれない。
「よーし!! あたしだって身軽に動けるところみせてやるんだから!!」
呼応するようにVDも、遠方のハーベイに親指をたてた。
●共闘
それからは確かな手ごたえ。岩間の間を縫うように突進してくる軋り狼の脚をアンリの爆炎が止め、そこで産まれる死角からVDが身体全体に力を籠めた蒼爪斬を叩き込む。
それ自体はその巨体に深い傷を負わせられるものではない。でもそれでいい、自分たちの作ったこの戦場ならば―――
パァ…ん
距離を置いた陰間から、弱点であるその結晶に狙い定めた一撃。結晶が一本落ちるたびに激高を上げる。奪われる度に大きな爪で抵抗し、近距離のVDに危機迫ることがあったが、アンリを含め戦況に勝利を見出した他の囚人たちの援護もあり致命傷を食らうことは避けられた。
喉を鳴らし、口元からは興奮からか大量の唾液が漏れ落ちる。明らかに動きが鈍り息も荒い…それは結晶の喪失と共に弱ってきている事を囚人達に知らしめていた。
(後、1本!! もう少しだ耐えてくれ)
ライフルに姿を変えた右腕を左手で支え弾道を定めるべく狼の背を見る。後方位置のハーベイが攻撃を食らう可能性はほぼない、只ひたすら結晶の点を目掛け弾を放ち続ける。
遠目に見ても軋り狼もだが、足止めをしている二人も、じきに体力や魔力の限界がくる。少しばかり焦りも感じていた。
「だぁぁぁぁぁ!!」
VDが自身を鼓舞するように叫びあげる。今までにない力を軋り狼に叩き込めば、タイミングを合わせたかのようにアンリも炎を放つ。
う゛ぉぉぉぉぉぉんん!!
巨体は叫びと共に大きな音を立てて地に横たわった。
「これでラスト、…撃ち抜くぜ」
しん…
ほんの一瞬、荒野の風が止む。そのタイミングを見逃さず、狙い定めた一撃を最後の結晶に撃つ。はじけ散る結晶の欠片は荒野の吹き抜ける風と共に舞い、気づけば軋り狼は完全に息を止めていた。
●撤収
「僕が浅慮であったようだ。すまなかった」
看守の迎えがくるまでの間、VDが負った小さな傷跡を見ながらアンリが言葉を向ける。戦っている間に感じたなにか…まだ信頼と呼べるには微妙なその感情を彼なりに伝えたのだろう。
「うまくやっつけられてよかった」
少し照れたように頬を掻きつつ応える。
「お嬢ちゃん…」
「あたしにはVDって名前、あるよ」
「それはそれは。VD、それに翼の…」
「アンリだ」
「アンリもよく耐えたな、頑張ったな、死人が出なかった…それだけで十分だ」
そんな二人を眺めながら戦う前に吸い損ねた煙草を口に咥えながら二人を見やる。
「ば、そんなんじゃねーし!」
ハーベイから向けられた言葉に照れつつも、自身達を回収する馬車を待ったのであった。畳む
#PBW リプレイ文字数:2,964文字
プロジェクトナニカ様のクリエイター募集にて送付させていただいた内容を、置いていたら恥ずかしくなったところを修正したものになります。つまり、提出したのはこれよりも…。
●3人の囚人
荒野に相応しく乾いた空気に、『軋り狼』の咆哮はよく乗った。囚人達の前に堂々と降臨し、その姿、その大きさ、それだけでも戦意を削ぐには十分で。むき出された牙と鋭い爪は、闇雲に向かったとて勝機は見いだせない…と、それこそここが終の場所なのだと祈りに逃げる者も現れる。
「ふん。こんな獣など、僕ひとりでも十分だ」
そんな彼らの姿を横目に大きな蝙蝠型の翼を広げながらアンリが独りごちる。既に戦意喪失した彼らをただ犠牲にする必要もなし。口は悪いが彼なりの思いやりなのかもしれない。
(まずは僕の力がどの程度奴に通じるか…。弱点はあの背中の結晶、さてどうする…?)
ふむりと息を吐き、その呪いで得た翼を広げれば、目の前の巨体との距離を測りながらその手に深紅の炎を纏わせた。
(ヤバイ、ヤバイ…! こんなにデカいの!?)
アンリよりさらに後方、岩山で丁度陰になる位置から戦況を見る獣人マガリであるVDの姿がある。看守と衝突の絶えない彼女は、敵を其の目で認識するまで、もしかすれば少し楽観していたのかもしれない。しかし、それはあまりに巨体で、動くたびに打ち合い奏でる結晶の不協和音が耳障りである。
目の前で一人巨体に立ち向かう青年の姿を瞳におさめながら、「サイアク…」「やってらんない…」と本音という愚痴を零しながら、そこにいるだけで感じる強者の気配に、恐怖か緊張か、その陰から飛び出る足が出ずにいた。
そんな光景をまた別の岩場の陰から狼狩のハーベイは静かに見守る。元々人狼狩りを生業としている彼にとって、種は違えどなじみのある敵なのかもしれない。彼は戦いの開始前に煙草をひと吸いするのがお決まりとなっているが、今はそんな余裕もない…と出しかけたそれを懐に戻す。
(まあ、ちょっと違うようだが…)
右腕の義手を摩る。それは静かに展開をはじめ、獣をとらえるためのライフルへと形を変えた。
「さあて……楽しい楽しいお仕事の始まりだ」
巨体が故の面倒くささは感じるが、自分が狙うべきあの輝く結晶の位置は分かりやすい。それはハーベイにとっては幸運なことであっただろう。ただ問題は動けそうな囚人たちがどのようにアレと立ち向かうのか…それが掴みきれずにいた。
●対峙
アンリから放たれた炎は軋り狼の前足に直撃する。大きなダメージはないものの、足を止める程度には効果があるらしい。しかしそれは、軋り狼のターゲットが彼にロックされてしまうほかならなかった。火炎が飛んできたその方向を軋り狼はゆっくり見上げる。
―― あれか
視線が一瞬重なったその瞬間、アンリはそんな声が聞こえた気がする。と同時に、ぞくりと背筋が凍るような殺意。次の瞬間その巨体からは想像もできない機敏さでアンリ目掛けて跳ね上がり、彼がそうしたのと同様に機動力を奪うべくその翼目掛け、鋭い爪が狙い定めた。幾度の攻撃を避けたものの気づけば背に岩壁が迫る。
「…しまっ!!」
迫る危険に成す術を考える余裕はない。無意識に腕でガードするが…。
ざしゅ…
空を切り裂く衝撃波がアンリと軋り狼の間に走る。
「や、やった」
VDが間に飛び込み放った蒼爪斬が軋り狼の体に直撃し、ほんの僅かであるが仰け反らせることに成功する。だが無理矢理間に入ったがために、VDの右腕にもまた狼の爪の先がほんの僅かあたる。
「あたしだって、やれるんだ……!」
深手ではないものの腕に滴る血を抑えつつ、彼女の少なからず自信として芽生えたのかもしれない。…が。
「貴様、何をやっている!」
危機を脱出したアンリから投げかけらる怒声。
「あんたがどう思うかわからないけど、あたしはここで他の囚人がやられちゃったら…そうなったらあたし、きっと自分を許せないよ。それに大丈夫、掠っただけだし」
そんな彼にVDは腕を軽く回して見せ、そのまま再び軋り狼に蒼の衝撃波を打ち込んでいく。しかし一撃一撃は確かに敵を捕らえてはいるが、その巨体故か決定的なダメージを与えている手ごたえは感じられない。
二人の中に焦りが宿る。
ばりん
長く感じたその一瞬を切り裂きそれは起きた――と同時に軋り狼から苦痛を示す雄叫びがあがる。見れば背の結晶が一本崩れ落ちていく。
「結晶の破壊は任してもらえないかい?」
左手を振り居場所をアピールしながら、アンリとVD呼びかけるハーベイ。先立っての二人の行動を見て、今回動けそうな囚人を見定め、そうを伝える。それは単独行動を得意とするアンリにとっては不本意なものであっただろう。
だが。
「わかった。足止めは此方に任せろ。彼女の能力と合わせれば、十分可能なはずだ」
彼は、先程のVDの言葉に何かしらの気持ちが動いたのかもしれない。
「よーし!! あたしだって身軽に動けるところみせてやるんだから!!」
呼応するようにVDも、遠方のハーベイに親指をたてた。
●共闘
それからは確かな手ごたえ。岩間の間を縫うように突進してくる軋り狼の脚をアンリの爆炎が止め、そこで産まれる死角からVDが身体全体に力を籠めた蒼爪斬を叩き込む。
それ自体はその巨体に深い傷を負わせられるものではない。でもそれでいい、自分たちの作ったこの戦場ならば―――
パァ…ん
距離を置いた陰間から、弱点であるその結晶に狙い定めた一撃。結晶が一本落ちるたびに激高を上げる。奪われる度に大きな爪で抵抗し、近距離のVDに危機迫ることがあったが、アンリを含め戦況に勝利を見出した他の囚人たちの援護もあり致命傷を食らうことは避けられた。
喉を鳴らし、口元からは興奮からか大量の唾液が漏れ落ちる。明らかに動きが鈍り息も荒い…それは結晶の喪失と共に弱ってきている事を囚人達に知らしめていた。
(後、1本!! もう少しだ耐えてくれ)
ライフルに姿を変えた右腕を左手で支え弾道を定めるべく狼の背を見る。後方位置のハーベイが攻撃を食らう可能性はほぼない、只ひたすら結晶の点を目掛け弾を放ち続ける。
遠目に見ても軋り狼もだが、足止めをしている二人も、じきに体力や魔力の限界がくる。少しばかり焦りも感じていた。
「だぁぁぁぁぁ!!」
VDが自身を鼓舞するように叫びあげる。今までにない力を軋り狼に叩き込めば、タイミングを合わせたかのようにアンリも炎を放つ。
う゛ぉぉぉぉぉぉんん!!
巨体は叫びと共に大きな音を立てて地に横たわった。
「これでラスト、…撃ち抜くぜ」
しん…
ほんの一瞬、荒野の風が止む。そのタイミングを見逃さず、狙い定めた一撃を最後の結晶に撃つ。はじけ散る結晶の欠片は荒野の吹き抜ける風と共に舞い、気づけば軋り狼は完全に息を止めていた。
●撤収
「僕が浅慮であったようだ。すまなかった」
看守の迎えがくるまでの間、VDが負った小さな傷跡を見ながらアンリが言葉を向ける。戦っている間に感じたなにか…まだ信頼と呼べるには微妙なその感情を彼なりに伝えたのだろう。
「うまくやっつけられてよかった」
少し照れたように頬を掻きつつ応える。
「お嬢ちゃん…」
「あたしにはVDって名前、あるよ」
「それはそれは。VD、それに翼の…」
「アンリだ」
「アンリもよく耐えたな、頑張ったな、死人が出なかった…それだけで十分だ」
そんな二人を眺めながら戦う前に吸い損ねた煙草を口に咥えながら二人を見やる。
「ば、そんなんじゃねーし!」
ハーベイから向けられた言葉に照れつつも、自身達を回収する馬車を待ったのであった。畳む
#PBW リプレイ文字数:2,964文字
はたして参加してくれる囚人さんたちがいるのか、そこが不安でしかない。
本当はXやらで告知とか精力的にやればいいのだろうけど、アカウント管理ができる気がしないのと距離感バグりたくないので、ひっそりひっそり。